若手育成講座 第1回1日目
2019.01.18



こんにちは、あにめたまご広報担当Tです。
今年もいよいよ「あにめたまご2019若手育成講座」が始動となりました。今年の若手アニメーターたちは昨年に比べて積極的で、講座開始前から互いに交流を図るなど賑やかな雰囲気に包まれていましたが、いざ講座が始まるとその空気が引き締まります。これから早速その講座の第1回(1日目)の様子をレポートしていきますので、今年もお付き合いのほどをよろしくお願い致します。

記念すべき最初の講座は、あにめたまご2019プロジェクト運営委員会 副委員長でもある竹内孝次氏(プロデューサー/プロダクション・コーディネーター)による「原画=キーポーズとブレークダウンについて」から開始。ボールが投げられた際の放物線、人が椅子から立つ時の動きなどを例に「途中の動きはどうなっているのか」を考えていきます。この考えが講座の主旨となる「キーポーズ」と「ブレークダウン」へとつながっていくのです。




安定したポーズ1(キーポーズ)と次の安定したポーズ(キーポーズ)の間の動きのポーズ、つまり動きを表現するために静から静の間に必要な動きのポーズがブレークダウン。そのブレークダウンを描く際に大切になってくるのが「体重移動」と「重心」。これを確認しようと若手アニメーターたちは椅子から立つ際の動きや、実際に歩いているポーズを実践してみては「頭で考えていたブレークダウンのポーズと、実際はこうなっていなければ動けない本来のブレークダウンの動き」の違いを肌で感じ、動きの原理を理解していきます。竹内氏が語るにはひとつの動き(=体重移動)を表現するために必要な指示ポーズは最低3つで、起点と終点の間に「どのような過程でそうなったのかが誰にも分かる中間の動き」が必要なのだそう。実際に身をもってブレークダウンを体験した参加者たちは、その大切さを理屈で理解したことでしょう。

他にもサムネイル、カット割り、テンポなどの解説もあった内容の濃い講座はあっという間に終了の時間。「現在の日本の原画はブレークダウンの指示を省きがち、皆さんがアニメーションを作る際には是非このブレークダウンをしっかりと作って欲しい」との言葉が印象に残る講座でした。






講座の2時限目は演劇集団円に所属する俳優の瑞木健太郎氏の指導のもとで行われた「シアターゲーム」が開かれました。まずは準備運動とばかりに瑞木氏の動きに合わせて体を動かす若手アニメーターたち。最初は目の前の動きを真似をすればよかったものが、「ひとつ前の動きを真似してください」「ふたつ前の動きを真似してください」と、徐々にハードルが上がると動きを間違える人が続出。こうして頭と体の体操で体を解した参加者たちは、次々に「伝えること」を体感できるゲームに挑戦していきます。

全員が輪になって隣の人にクラップ音を伝えていくゲームでは、音が右へ、左へと進行方向を変える中で何とか手拍子を繋げようと奮闘する参加者たち。ふたりペアになって相手から聞いた話をどこまで覚えているのかを確かめるゲームでは自分の記憶の曖昧さを目の当たりにして笑い声も聞こえます。こうして様々なゲームを通じて「相手に伝えること」の大切さと難しさを経験した参加者たちは、楽しみながらも「伝えることの難しさ」を実感したのではないでしょうか?






昼食休憩を挟んで3時限目は株式会社トムス・エンタテイメント知財管理部長の笹平直敬氏による「契約の講座」。用意されたサンプル契約書を見ながら請負契約に関する知識を習得するとともに、契約締結の重要性を学びます。

講座は「契約と約束は違う。契約に違反すると法律により罰せられることもある」という大前提からスタート。「友達同士で”飲みに行こう” ”わかった”との会話は契約か約束か?」「コンビニで買い物をしてレシートを貰うのは契約か?」「タクシーに乗って所定の位置まで運んでもらうのは契約か?」など身近な例を挙げながら「契約」とはどのようなことかを学んでいきます。

さらに笹平氏は「“契約”はあるが“契約書”がないという場合があることを覚えておいてください」と続けます。契約は原則として口頭でも成立するので、書面にしなくても合意があれば成立するもの。ではなぜ契約書を作成するのでしょうか? その理由は「有力な証拠になる」「取引を行う際のチェックリストになる」「大きなリスクをはらむなど、コストをかけても契約書を作成する意味がある」と3つのメリットがあるから。さらに専門的な話が続きますが、この講座で特に若手アニメーターに覚えておいて欲しいことは「言った、言わないで信頼関係を壊さないためにも合意事項は書面に残す」という基本概念です。法律を扱う内容ということもあり、睡魔に襲われがちなこの講座ですが、今年は笹平氏の話を一字一句を聞き逃すまいとメモを取る積極的な参加者の方が目立つ時間でした。






4時限目となる講座は、アニメーターのりょーちも氏を迎えて「空間を認識する能力」の講義となります。「Blender」という3DCGソフトを使いパース感覚を技術的感覚に落とし込んで身につける狙いが込められたこの講座は視覚に訴える内容が多め。スクリーンに表示された物体に対して、画角を望遠にしたり広角にしたりを繰り返して物の見え方の変化を感じながら「カメラの位置」に意識を向けさせます。そんな中で多くの若手アニメーターに衝撃を与えていたのが、説明のためにりょーちも氏が描いた絵がBlender内の球面に描かれていたことではないでしょうか?
りょーちも氏は「焦点が、中央にある対象物にあるとき、そこから離れていけば行くほど歪みが生まれる」というレイアウトの基本を新感覚の理論で紹介すると、最後は「表現は日々進化しているのでいろいろなアタックして欲しい。カメラの位置により見えかたは変わる。それがどんな効果を生むのかを肌感覚で覚えていって欲しい」と若手アニメーターにエールを送って幕となりました。






この日最後となった講座は株式会社手塚プロダクションに所属するアニメーターで、あにめたまご2019プロジェクト運営委員会 委員長である瀬谷新二氏による「レイアウト講座1」が開かれ、「広角」「標準」「望遠」カメラで見た時の絵を描いてみるトレーニングからスタート。続けて指定のカメラから見える(であろう)椅子の様子を描き起こすトレーニングに移ると苦戦する人も多かったようで、各グループを回る瀬谷氏から「これは違うよね?(※こうは見えないよねという意味)」という厳しい声が何度も飛びます。

講座の仕上げは「レイアウトの練習」として3点のシチュエーションレイアウトを描写。講義時間は2時間30分とこの日最長ではありましたが、若手アニメーターたちは苦戦しながらも活き活きとした表情でレイアウト用紙に向き合っていました。






こうして若手アニメーターたちにとってはじめての講座が開かれましたが、今年は初日から仲間同士で交流を図り、積極的に講師に質問する姿が目立ちました。こんな積極的な若手たちが、どのような作品を仕上げてくるのか、じつに楽しみですね!