あにめたまご2019 司会者 津久井教生X田中あいみ インタビュー
2019.02.09


来月、3/9(土)「あにめたまご2019完成披露上映会」の司会を務めていただきます、声優の津久井教生さんと田中あいみさんに「あにめたまご」について語って頂きました。今までのあにめたまごの作品の中で、『UTOPA』と『えんぎもん』に出演された田中さんと、あにめたまご2016から初号試写で作品を鑑賞頂いていた津久井さんが感じられている「あにめたまご」とは一体どのようなものなのか。是非、ご覧ください。



津久井 僕は以前から《あにめたまご》のことを知ってまして、今回の司会のお話をいただいたときはストレートに嬉しい! というか、これでようやく確実に参加できるなと。若手アニメーターさんの育成ということでも、僕も学校で声優志望の若い子たちを教えている関係もあって、実は2016年度から関係者試写で《あにめたまご》の作品を毎年拝見させていただいてるんです。(田中)あいみちゃんが出演していた『えんぎもん』(18)も見ましたよ。

田中  ありがとうございます! 私はこれまで『UTOPA』(16)『えんぎもん』と《あにめたまご》の作品に2本出させていただいておりまして、まさか津久井さんがご覧になっていただいているなんて、今初めて聞きましてびっくりしました。でも、作品に出させていただいている側だったのが、今回は司会という別の立場からの参加ですので、正直すごく驚きました。しかも歴代の司会の方々って、私が小さい頃から知ってるベテランの方々でしたし、津久井さんもずっとお世話になってる大先輩ですので、またお仕事させていただけるのがとても嬉しいです。

津久井 《あにめたまご》ってオールカラーの“画”でアフレコやるのが規定なんでしょう?

田中  はい。今は線画がちゃんとできてるものですら珍しくなってきている状況でのアフレコも日常な中で、逆に画がオールカラーというか、しっかりできているからこそ、こちらもちゃんとお芝居を組み立てて合わせていかないといけないといった、違った意味での取り組み方を体験させていただきました。


津久井 やり続けていけば普通に慣れていくんですけど、要はそういうものが少ないから、若手の子たちもなかなか慣れない。僕が出させていただいる作品で、全部“画”がある作品もあるんですよ。 “画がある”というお芝居ができる。一方、現状(テレビアニメは)プレスコに近い感覚の収録ですけど、今は録音技術も発達してますし、我々声優もエンジニアの方々を信頼して思い切りしゃべって、違ってたら音響監督が必ず「違う」と言ってくれるんだという相互関係でやっていけばいいと思います。声優がすべてやってるわけじゃないんだから。

田中  そうですね。

津久井 ただ、実は僕も画のあるアフレコは、ある意味緊張しますね(笑)。画がないとその分自分の感覚でやれるわけですけど、かっちり画があると「この口パクが終わるまでにやらなきゃいけない……」とか(笑)。

田中  私も画があると緊張します!急にキャラクターの口がポコッと開いたりしたら「これは何の驚きなの?」と驚いたり(笑)。逆に画がなかったら、自分で台本のト書きとかセリフとかで相手との距離感とか想像しながらやるようにしています。でもアクションになるとまた難しくなるんですよね。「これって何回殴られてるんだろう?」とか(笑)

津久井 そうそう(笑)。

田中  でもそういうのも音響監督さんとすり合わせながらやっていく楽しさはあります。

津久井 録音技術の進化によって声優の声も変わってくる。昔はマイクに対してそれなりの発声をしなければ録音ができなかったんですよ。でも今は電気を通さないダイナミックマイクの時代から、電気を供給しながら声を吸い取っていく感覚のコンデンサーマイクへと進化しています。ダイナミックマイクの時代はダイナミックレンジ(信号の情報量を表すアナログ指標)の比率が低く、たとえば「何するんだよ」と怒るセリフにしても、声優は「何するんだよ‼」と大声を張らないとダメ出しされてました。いわゆる舞台の感覚に近かったですね。でも、今それをやるとゲージが振り切れてしまうので、もっと普通の発声になります。

田中  実際に現場で「もっと小さく、ささやくように」って指示されることも多いですよね。

津久井 スピーカーの発達も大きいんです。昔のテレビのスピーカーだと、さっき言ったような声量でやらないとちゃんと聞こえない。昔、外画の麻薬密売組織シーンのアテレコをやってるとき、ある名物ディレクターから「実際はひそひそ声でささやいているんだけど、そのままやってテレビで流すと、ほら、聞こえないだろう?」って実際に聞かさてもらったことがありました。だから本番では「ここは俺が行くから、お前は待ってろ‼」「バカ! 俺が行くんだよ‼」と声を張り上げながらやりました。それは芝居としてウソなんだけど、スピーカーから流れないって言われちゃうとね。でも『新世紀エヴァンゲリオン』(95~96)のあたりになると薄型スピーカーが開発されたりして、「私、にんにくラーメン、チャーシュー抜き……」もOKになっちゃう(笑)。あれには驚きましたね。ですから収録技術もそうだし、音を出す技術の発達もあって、我々声優が求められてるものもどんどん変わっていくんです。

田中  この先もどんどん変わっていくんでしょうね。深いお話ありがとうございます!

津久井 何をおっしゃいますやら!(笑)ジイジは若者たちに期待してますよ。あいみちゃんもちゃんと“今の時代を生きてる”声を出してると思うしね。僕らの世代はどうしても演劇論みたいな理屈になりがちだけど、娘たちはポワ~といけちゃうんだよねえ(笑)。イヤ、ホント、これからどういう風に進化していくのか楽しみでしょうがないんですよ。あいみちゃんたちって、キャラを見ただけでスッと入り込むことができるでしょ。

田中  そうですね。キャラを見ると「こういう声かな?」ってすぐに思っちゃいます。

津久井 実写の役者さんが声優をやるときって、どうしても自分を出そうとする訓練をしてきているから、声も自分が出てしまう。でも声優は最初からそのキャラに合った声を出そうとする。その違いもあるし、舞台などの役者をめざし、芝居の一環として声優をやるようになった僕らとも違う、最初からアニメの声優を目指してこの世界に入ってきた今の若い世代の良さなのかなとも思います。役柄に対するアプローチって、彼女たちのほうが高いですよ。


田中  私なんかはただ先輩方がやられている後に続こうみたいなという気持ちでやってきているだけで、違うことをやってる意識もなかったので、今そういう印象を持たれてるってことを初めてお聞きして、何だか……複雑です(笑)。

津久井 話は長くなったけど(笑)、アニメーターにしても、きっと今の若手ってベテランの人にはない感性ってあると思うんですよ。《あにめたまご》の場合、アニメーター歴が1年~3年の若手が対象と聞いています。ちょうど「やりたいこと」と「やれること」の境目にいる頃だから、ある意味一番初々しくも面白い時期でもありますね。

田中  私も《あにめたまご》に2本、声で参加させていただいたとき、他のアニメと違うものを感じました。画がしっかり描かれてるから、時の流れとかがちゃんと把握できますし、たとえば『UTOPA』はちょっとほの暗い世界観でしたので、より自分が何をしたいのか、どこに行きたいのかという目標みたいなものが生まれて、一歩一歩そこに向っていくこともできました。

津久井 《あにめたまご》は若手のアニメーターさんがアフレコの現場を見学するのも常なんですよね。
知ってた?

田中  いえ、こちらは全然知らないままやってましたので、今それを聞かされて驚きです。

津久井 まあ、僕らもこの画を描いた人たちがブースの向こう側から覗いてると知らされたら、それはそれでプレッシャーだけどね(笑)。でも、アニメーターさんもぜひアフレコ見学はやったほうがいいと思います。我々がこんな風にしてキャラに命を吹き込んでるということを把握しながら画を描いてもらうと、結構良いものになるんじゃないかと思うし、またそれは声優の側にも相乗効果がもたらされるでしょうから。

田中  そのキャラのことを一番わかってくれている人がそこにいるんだって安心感もありますよね。私の解釈と違うところとかあったら、軌道修正してくれるんじゃないかって。

津久井 でも今回、僕らは司会者として壇上で若手アニメーターの人たちと相まみえるわけですよ。まあ、僕はしゃべり始めるとウンチクが長くなりがちなので(笑)、今回は聞く側に上手く回りたいと思います。ただひとつだけ注意しようと思ってるのは、僕はキャリアが長いだけ変にいろいろ知ってきているので、逆に今そこにいる若手の彼らが何を考えているのかをちゃんと聞いてみたい。その意味でも今回のコンビが彼らとほぼ同じ世代のあいみちゃんで良かったなと思います。つまり彼女が若手の子たちとどんな話をしてくれるのか、すごく楽しみなんですよ。

田中  もう、プレッシャーかけないでくださいよ(笑)。

津久井 いや、今は僕いっぱいしゃべってますけど、ここで「おっさん元気だな」ってとこを見せといて、
その分本番では後ろに下がって、あいみちゃんに思う存分やってもらい、何か困ったことがあったら僕のほうを振り返ってくれればと(笑)。


田中  振り返ってばかりだったりして……(笑)。

津久井 逆にみんなが壇上でシーンとなっちゃったりしたら「お前らー!」って、俺しゃべりだして止まらなくなるからね。そのときは「こら、オヤジ!」って、止めてね(笑)。

田中  はい、頑張ります……(笑)。

津久井 とにかく本番では、田中あいみというキラキラ輝いている若い世代をアシストしながら、壇上の
若手アニメーターさんたちをキラキラ輝かせることができたらいいですね。

田中  私、このお話をいただいたときは津久井さんのアシスタントという気持ちでいたんですけど、どうもそうではないってことが今日わかりまして……(笑)。でも若手アニメーターさんとか作り手側の方々とお話しできることってこれまでなかなかなかったので、この機会にいろいろみなさんのお話をうかがいつつ、私も勉強させていただけたらと思います。

津久井 あ、ちなみにこれってリハなしのぶっつけ本番らしいよ(笑)。

田中  そうらしいですね……(笑)。

津久井 僕、そういうの大好き(笑)。

田中  《あにめたまご》の現場はいつも温かいので、私も大丈夫です!(笑) 



  • プロフィール
    津久井教生
    所属:81プロデュース
    声優を中心に舞台、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広く活躍中で、人材育成にも情熱を持って後進の育成にあたっている。NHK Eテレの人気者“ニャンちゅう”での四半世紀を超える声の演技で、個性的なキャラクター形成を担っている。主な声優出演作としては、『ちびまるこちゃん』(関口くん)、『ダッシュ!四駆郎』(地味貢二)、『スクライド オルタレイション TAO』(ストレイト・クーガー)など。また、「あにめたまご」へは、初号試写の出席などを通してプロジェクトへの理解を進め、今回の披露上映会でMCでの参加となった。
  • プロフィール
    田中あいみ
    所属:81プロデュース
    2013年デビュー。2015年放送の『干物妹!うまるちゃん』で主人公の土間うまるを演じ頭角を現し、2016年に第10回声優アワードで新人女優賞を受賞。そのほか『つうかあ』(目黒めぐみ)、『上野さんは不器用』(田中)などで活躍中の今注目の若手女性声優のひとり。「あにめたまご」の作品である『UTOPA』(クイ役)、『えんぎもん』(小福役)で出演の実績もあり、このプロジェクトとの縁も深い。今回、若手アニメーターと同世代の声優として、披露上映会のMCを担います。